『新春浅草歌舞伎』をみて

『新春浅草歌舞伎』@浅草公会堂 
2018年1月2日〜26日
2018年1月4日(木) 午前の部 3等席 
・お年玉年始挨拶 坂東新悟
・『義経千本桜』より「鳥居前」
佐藤忠信実は源九郎狐 中村隼人
源義経 中村種之助
静御前 中村梅丸
逸見藤太 坂東巳之助
武蔵坊弁慶 中村歌昇
・『元禄忠臣蔵』より「御浜御殿綱豊卿」
徳川綱豊 尾上松也
冨森助右衛門 坂東巳之助
御祐筆江島 坂東新悟
中臈お喜世 中村米吉
上臈浦尾 中村歌女之丞
新井勘解由 中村錦之助

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真っ赤な背景に舞う金色の紙吹雪、、、の中に佇むイケメンたち。一見どこぞのアイドルのようにみえる彼らは歌舞伎界を担う若手役者たちである。その派手なフライヤー(とイケメン)に惹かれチケットを取った歌舞伎ビギナーの戯言。

<舞台を観るときは真っさらな状態が一番!>派ではあるが、歌舞伎はさすがに無理だろうと予習して臨んだ。まずは『義経千本桜』より「鳥居前」。隈取りの登場人物による荒事、見得、立廻りなど歌舞伎の様式美に溢れており、初心者からするとこれぞザ・歌舞伎という印象。狐忠信と藤太の対決は見応えがあった。「狐六方」では忠信の威勢の良さに加え、随所に使われる狐手が愛らしく目が離せなかった。休憩を挟み、続いて真山青果作『元禄忠臣蔵』より「御浜御殿綱豊卿」。綱豊卿と助右衛門の緊張感のある駆け引きが見どころの台詞劇。台詞劇は流石に初心者には難しい––史実を予習していた分置き去りはなんとか免れたものの、まだまだ理解が及ばない。しかしそれでもひしひしと伝わってくる迫力は役者のつくる空気感の所以であろう。互いの様子を伺いながら綱豊と助右衛門が放つ膨大な駆け引きの台詞の後、訪れる沈黙がとても印象的であった。また最終場、助右衛門に対し本来の義を説き、能舞台に戻りゆく綱豊のその悠々とした姿と力強さが今もなお瞼の裏に焼き付いている。甚く感動したのは言うまでもない。

人生で3度目の歌舞伎鑑賞であったが、今回ふと、あの化粧の下に隠れた殿方のお顔を想像するのもまた歌舞伎の楽しみ方の一つではないだろうか、と思った。秘めたる美。(少々邪道な気はするが)何はともあれ、めでたい新年、観劇はじめに相応しい煌びやかな公演であった。午後の部もみたいぞ。