『星の王子さま サン=テグジュペリ物語』をみて

ザ・ライフ・カムパニイ Vol.57

ミュージカル

星の王子さま サン=テグジュペリ物語』

2018年1月26日〜28日@立行会ホール

2018年1月27日(土)マチネ観劇

*****

  サン=テグジュペリの実人生と彼の著書『星の王子さま』を並行してみせる物語構成。2つの話の筋を並行してみせる(何か用語がある?知識不足。)とき、そのどちらかに重きをおく必要があるように感じる。1つが軸となり、果たしてそれを補強するもう1つなのか、それともそれと対比するもう1つなのか。

  『ラマンチャの男』は代表的なその例であり、作者のセルバンテスが彼自身の書いた戯曲の主人公ドン・キホーテを演じる。比重が大きいのはセルバンテスの実人生の方であり、彼の人生を補強するために戯曲が使われる。舞台上で長く見せているのは戯曲のほうだが、印象としてはセルバンテスの実人生がより記憶に残る、といった具合。※ちなみに『ラマンチャの男』は私の中で「全く期待してなかったのに実際観たらものすごく良かった演目」ナンバー1かもしれない。

  今回の『星の王子さま』でいうとそのピースが上手くはまらなかったきらいがある。2つの物語が5:5で描かれ、場面が等間隔。強弱がないというか、ピークがないというか。それぞれが主張しすぎていて別物に思われる。

  既に完成している『星の王子さま』に作者の人生をあえて付け加えたのだから、強調したいのは後者だろう。そしてピースがうまくはまらないもう1つの理由がおそらくここにある。この脚本だとサン=テグジュペリというよりも彼の妻、コンスエロの方が主人公なのだ。コンスエロだけではないーー母親、妹、操縦士仲間の妻、シルビア。女。空に夢見る男に魅了され、地上に1人残され待ち続ける女、その偉大さの物語である。確か「サン=テグジュペリの小説はこの母から生まれた」というような台詞があったと記憶しているが、もうなんだかこれだけで一本演目がつくれそうである。

  『星の王子さま』に出てくるバラは女、棘はプライドの象徴、モデルとなったのはコンスエロということをみせるのであれば、例えばバラとコンスエロを同じ役者が演じるなどすればまた印象は違ったのかもしれない。しかし本作でその双方に抱くイメージは真逆であった。

  『星の王子さま』パートでいうと、王子が旅した星が自惚れ屋と地理学者を省いた4つになっていたことが気になる。地球にいる人間はその面白可笑しく語られた星の住人を集めたようなものだという皮肉が弱まってしまうのが残念だった。美術セットに関しては、飛行機やりんごの木になり得る四角い箱が印象的でよかった。

  ただでさえ無数のテーマがあり掴み所の難しい『星の王子さま』である。それら全てを盛り込み、さらに作者の実人生を加えるとなるとなかなか難しい。詰め込みすぎたため焦点が分散してしまった。もったいない、そんな印象を受けた舞台であった。